UKWMO


09:57 ヨークシャー州フィリングデールズ: レーダーが我が国への攻撃を探知した。英国警報監視機構UKWMOは、直ちに行動を開始する。その任務は一般市民に対して、警報を出すことである。


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09:58 核攻撃警報が主要な警察署にある250の中継ポイントに届く。警察はサイレンで一般市民に避難を呼びかける。一秒一刻を争う。


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警報による防護

英国は核攻撃に対して非常に脆弱である。しかし、たとえ核攻撃を受けたとして、たとえ数分前であろうとも、一般市民へ警報が出せれば、数えきれない人々の生命を救うことができる。さらに、放射性降下物のパターンおよび経路に関する情報を迅速に収集・放送することで、より大規模な犠牲者が出るのを防ぐことができる。

この2つの基本的な要請を実現するために、ここ数年で、英国警報監視機構UKWMOを発展させた。これは英国全土をカバーするシステムであり、たとえ他の地域が広範囲に被害を受けても、なお各地域が機能するようになっている。

UKWMOは英国内務省の直接指揮下にある。これはコンセプトや青写真ではない。今日、施設と通信線と訓練された要員として、既に存在している。平時には最小限の要員で維持されているが、非常事態では数時間で、フル稼働できる。最大動員時は、数千人の訓練された要員と、建築家や技術者や農場や工場の労働者や会計士や公務員や様々な小売業や職業の人々など、あらゆる職種の大量の志願者たちが動員される。


NATOとの連携

さらに基本的な役割として、UKWMOはNATOの英国文民サービスを提供する。核攻撃時のUKWMOの任務のひとつが、英国での核爆発および放射性降下物の情報をNATOへ提供することである。これへの見返りとして、大陸からの情報を入手する。UKWMOの通信体制はこのサービス実現に合致するように構築されている。

これらの活動は一秒一刻を争う。UKWMOが行動を起こした時、一般市民に与えられる時間は3〜4分以上にはならない。これら数分の時間を有効活用できるか否かは、一般市民が核攻撃に備え、為すべきことを即時に知ることができるかどうかにかかっている。これは、敵対行動前に期間における徹底した教育の問題である。この小冊子、は可能な限り確実な警報システムを構築するための熟慮と努力を記載したものである。


UKWMOの役割

英国警報監視紀行UKWMOを5つの主要な機能を持っている。それは:

  • 一般市民に対する核攻撃警報。
  • 核攻撃の確認情報の提供。
  • 一般市民に対する放射性降下物警報。
  • 英国の文民機関および軍そして、NATO加盟の近接国への、核爆発および放射性降下物の経路および強度について科学的アセスメントの提供。
  • 核攻撃後の気象予報情報。

これらの活動の中で、核攻撃警報は不可欠かつ第一に重要な活動である。放射性降下物の監視は、より多くの人々と機器を必要とするが、重要な補助活動である。事実、UKWMOは最初の重要な機能の実現によって、その存在を正当化すると主張する者ものいる。


核攻撃警報

我が国に対する核攻撃の情報は、北米やNATOや我らが英国空軍セクターオペレーションセンター(SOC)などの多数の情報源から届く。しかし、核攻撃警報は主として、ヨークシャー海岸のフィリングデールズの弾道ミサイル早期警戒システムから来る。そして、アラスカおよびグリーンランドのシステムからも、さらなる情報が届くことになるだろう。

潜水艦により近海からの核攻撃の脅威についても、考慮に入れいている。特別な電子装置が、いかなる核爆発も起きたと同時に探知する。この装置はAWDREY(Atomic Weapon Detection Recognition and Estimation of Yield=核兵器探知評価および影響推定システム)としてい知られるものである。

これらの報告は、すべて、英国戦域防空指揮所(UK RAOC)の常駐する内務省職員によって評価される。常駐することで、英国全土への警報発令について軍事的助言を受けることができる。

UK RAOCにある特別な電子装置のキーを回すと、英国全土の主要な警察署に設置された250の中継点(CCP)に同時に警報が伝えられる。各中継ポイント(CCP)にある特別な通信のスイッチを押すことで、警察署は警報担当地域にあるサイレンを起動する。英国全土で7000程度のサイレンが設置されている。

これらは、郊外の11000程度の警報ポイントのネットワークでバックアップされる。これらの警報ポイントは主として、警察署、消防署、沿岸警備隊基地、文民および軍事施設、病院、各種産業センターおよび王立防空監視軍団による有人監視ポイントに設置されている。他に適切な設置場所がない地域では、店舗やパブや個人宅に置かれている。

各中継ポイント(CCP)は地域を担当する警報ポイントと、片方向搬送ライン放送システムで接続されている。このシステムは既存の郵便局の地域電話ケーブルネットワークに、そこで行われる通信に干渉することなく、放送を重ね合わせて搬送する。警報がこのシステムによって放送され、ネットワーク上の警報ポイントのオペレーターが、見かけはスピーカーに似たキャリアレシーバーユニットで受信する。

この電話線放送システムにより中継ポイントからの核攻撃警報を受信すると、警報ポイントのオペレーターは手動サイレンで警報を伝える。同時に、警報は全英レベルのテレビおよびラジオでも放送される。これらの全手段により、一般市民の多くが、危険から身を守るための行動をとれる時間前に警報を受信できると考えられる。


単純だが効果的な警報コード

単純だが、効果的な警報コードがUKWMOシステムの一部として考案されている(付録参照)。このコードは簡単に理解できて、重大な危険性を伝達する。この警告コードは核攻撃警報および放射性降下物警報、そして警報解除に対応している。


10:02 最初の不吉なキノコ雲、核爆発が爆発の瞬間に、特別AWDREY電子装置によって、UKWMOグループ本部に記録される。


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核爆発と放射性降下物の監視

UKWMOは、最初の放射性降下物警報の発令判断と、その後の放射性降下物の経路および強度の動向について科学的評価を可能とするための、核爆発および放射性降下物監視についての手順を持っている。これらの手順は、3階層の英国全土に展開した組織によって担われ、UKWMOの要員の大半がこれにあたる。第1階層は、フィールドレベルで、これは王立防空監視軍団のメンバーによる有人監視ポイントのネットワークである。これらはグループ本部として知られる第2階層が統括する。グループ本部は担当地域の変化をセクター本部に報告する。このセクター本部はNATOの多くの機関に、英国で起きていることを情報提供する任を負っている。

一般市民が懸念するように、この組織構造のカギとなるのはグループ本部であり、このレベルが多くの基本的な決定を行い、放射性降下物の強度や挙動について評価を行う。放射性降下物警報を発令するのも、このレベルである。

監視ポイントは英国全土に合計870ある。各監視ポイントは、25あるグループ本部のひとつに情報を送る。セクター本部は5つあり、うち4つがイングランド、一つがスコットランドにあって、それぞれ5つのグループ本部からの報告を受ける。これらのセクター本部のひとつ、ウェスタンセクター本部は北アイルランドも担当する。

隣接するグループ本部はテレプリンターや無線や電話で接続されている。セクター本部は5つのうちのひとつのグループ本部に併設されている。たとえば、リンカーングループ本部にはミッドランドセクター本部が、ダンディーグループ本部にはカレドニアンセクター本部が併設されている。

窓がないこと以外は、グループ本部およびセクター本部の建物は特に目立つものではない。しかし、これらは特定強度の爆風に耐え、放射性降下物から防護できるように作られている。各本部は、電源・衛生・換気・除染設備を持ち、緊急用の食糧や水を備蓄している。

UKWMO全体の指揮統率は5つあるセクター本部のうち1つが担当する。各セクターは独立ユニットとして機能できるようになっており、セクター本部間は通信可能となっていて、敵の攻撃でUKWMOの一部が破壊されても、警報発令判断等ができるような高度な柔軟性を備えている。


10:03 地下監視ポイントも核爆発を記録する。情報はグループ本部に分単位、場合によって秒単位で報告される。


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気象支援

気象はUKWMOの任務の中で重要な役割を演じる。英国全体の気象観測および気象予測はNATOにも提供される。これらの観測機器は、英国及び西欧への放射性降下物の予測および警報発令判断に不可欠である。

セクター本部レベルでは、各本部に3人の特別な訓練を受けた気象学者が常駐し、300万ポンドのコンピュータを装備したバークシャー州Bracknellにある気象庁の本部からの情報の解釈および予測を行う。これが敵の攻撃を破壊された場合でも、我が国の航空観測ステーションである8つのラジオゾンデからの直接リンクで受信するデータによって、任務を継続できる。

UKWMOはまた、870の監視ポイントのネットワークによって、気象観測に寄与できる。これらの監視ポイントのうち87には気象観測装置が配備されており、これらの監視ポイントの王立防空監視軍団の要員が、基礎情報、特に気圧と風向をグループ本部に送る。この種のデータは放射せ降下物の挙動の予測更新に不可欠である。

このようにして、UKWMOは機構として機能し続ける限り、気象情報の取得を確実なものにしている。さらに、攻撃中および攻撃後において、気象情報を文民および軍事機関に提供できる。


監視ポイント
放射性降下物警報の最前線

グループ本部はUKWMOの中枢センターとして機能できるが、監視ポイントは敵の核攻撃およびその影響がある間は、最前線となる。

非常時には、これらの監視ポイントは王立防空監視軍団の要員が配備される。平時においては王立防空監視軍団の要員は担当監視ポイントおよび機器を点検し演習に参加する。王立防空監視軍団は、第1次世界大戦以来の、別個のステータスと伝統を享受しているが、現在はUKWMOの一部をなしている。そして、UKWMOに統合される前に、第2次世界大戦を通じて、航空機報告機関として顕著な成果をあげてきた。

この監視ポイントの連鎖は英国全土をカバーするように設置されており、主要都市からたった数マイル離れたところに置かれている。監視ポイントは幹線道路から200ヤード以内の位置にあるが、草や木の茂みで隠されている。地上にある普通でないものは2つで、ひとつは青いプラスチックドームに似ており、もう一つは白いゴミ箱に似ている。前者はイオン化ちゃんバーで放射線レベルを計測する装置であり、後者は4つのポンホールカメラを収納していて、どの方向の核爆発も強度と高度を記録する。これはグラウンドゼロインジケーターと呼ばれる。

コンクリートのシャフトを梯子で降りると、地下6メートル程度に、2.1 x 4.8メートル、高さ2.1メートルのコンクリートの部屋がある。中継ポイントとリンクしているとともに、グループ本部とも通信リンクがある。監視装置のひとつに、爆発力インジケーターとして知られる装置があり、爆発の爆風の最高圧力を記録する。

爆風の最高圧力に始まり核爆発の詳細をグループ本部に報告することが監視ポイントの任務である。続けて、グラウンドゼロインジケータが記録した爆発の高度や爆発の威力などの詳細を報告する。

さらに、監視ポイントの上部に取り付けられた装置が放射性降下物の強度を記録する。監視ポイントは放射性降下物の到着をグループ本部に報告し、それ以後は放射能の強度を監視し、グループ本部に定期的に報告する。

予想されるように、監視ポイントは爆風および放射性降下物に耐えられるように設計されている。グループ本部やセクター本部と同様に、これらの監視ポイントは電力系統とは独立した電源を持っている。同様に、衛生設備や食料と水の備蓄がなされている。


10:08 核爆発の位置と強度が、監視ポストから報告された情報に基づいて、グループ本部で計算される。英国全土に870の監視ポイントが存在する。

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グループ本部の任務

25のグループ本部は郵便局の機能とデータ処理センターの機能を統合したものと言えるだろう。これらの主たる任務は監視ポイントから送られてくる核攻撃情報を評価することである。これらの報告から、グループ本部は放射性降下物の時間変化を予測し、一般市民に放射性降下物の到着を警告する。グループ本部の第2の任務は、情報及び結論をセクター本部や政府や地方戦時本部や軍事関連に伝達することである。

この任務を実行するために、典型的なグループ本部は40人程度の王立防空監視軍団の要員を含む、50人の訓練された要員と、科学者たちを含む警報担当官チームを必要とする。警報担当官チームはいつ、どこに警報を出すか判断する。

たとえば、Thames Estuaryで核爆発が起きたとすると、Maidstoreグループ本部近隣の多数の監視ポイントから、その爆発のデータが送られてくる。そして、三角測量の方法を使って、空中爆発か地上爆発かを判断し、威力や爆発の位置および高度を推定する。

グループ本部の幾つかにはAEDREY電子装置が装備され、この装置からの情報も三角測量に使われる。核兵器がどのように運搬されようとも、AWDREYは核爆発を探知し、記録できる。


放射性降下物警報

三角測量が完了すると、放射性降下物警報の判断が必要となる。放射性降下物警報は2種類の予測に基づく。最初は、核爆発から1〜2時間後に放射性降下物が到着する限界線を予測する。これは、三角測量によって算出される核爆発情報と、セクター本部で統合された気象予測情報、特に高度3000メートルまでの風速および風向予報が必要となる。

放射性降下物警報発令は、英国全土の750の警報区のパターンに基づく。これらの警報区は100平方マイルの領域である。警報の発令は、グループ本部から中継ポイントへの警報メッセージによって行われる。そして、警報は様々な警報ポイントへ電話線放送システムを使って伝達される。警報ポイントには放射能のレベルを測定する装置が装備されており、マルーンによて警報を知らせる。警報ポイント自身が孤立したと判断した場合、放射性降下物が規定レベルである0.3レントゲン/時になった時点で、マルーンにより警報を発令する。

これに続いて、科学チームが第2種の放射性降下物予測を行う。これは警報ポイントなどで観測された、実際の放射性降下物の到着時刻と、さらなる気象予報に基づいて行われる。この種の予測は、3時間後までの放射性降下物の蓋然性の高い経路について、より正確な描像を与える。これとともに、監視ポイントにいる王立防空監視軍団の要員は定期的に放射線強度情報を送信する。これらのデータはグラフにプロットされ、放射能のリスクの高いエリアをマップし、さらに後の時間の放射性降下物の到着を予測する。この情報は、早期の放射性降下物予測とともに、関係機関および、セクター本部を経由してNATO諸国の文民機関へ伝達される。


10:19 核爆発が透明のパネル上にプロットされる。想定される放射性降下物の経路が気象予報から予測される。そして、一般市民に警報が発令される。


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セクター本部の任務
UKWMOの英国全土レベル

グループ本部と同様に、5つのセクター本部は即時情報提供が任務である。しかし、提供先は国家レベルおよび国際レベルで、政府や軍やNATO加盟国の司令部である。各セクター本部は、これを行う能力を持っており、他のセクター本部が破壊されても、独立して機能するように設計されている。

特に、セクター本部の役割は、担当するグループ本部の活動を調整し、とkにエリア内の通信を統括することである。もうひとつの重要な機能は、ハイレベルの科学的助言を提示し、UKWMOの責任を果たせるようにすることである。

さらに、セクター本部は特定のNATO同盟諸国との連絡を担当している。たとえば、ミッドランドセクター本部はデンマークやドイツやオランダとの連絡を、メトロポリタンセクター本部はフランスおよびベルギーとの連絡を担当している。官僚機構のための実のない配置はない、非常事態においては特別に訓練されたNATO同盟国の連絡将校が、西欧の放射性降下物報告センター司令部へ報告する。同様に、連絡将校は英国のセクター本部にも報告する。これらの連絡将校は、核爆発および放射性降下物被害情報を各国へフィードバックする。

フル稼働時は、各セクター本部は約8名の要員を必要とする。その中には、予想外の事態について助言するセクター本部の科学顧問を含む科学チームや、放射性降下物予測の基礎となる気象予報を行う気象チームなどが含まれる。これらの予測は新たな予報により随時更新される。

10:23 中継ポイントが放射性降下物警報を英国全土の18000地点に伝達する。これらのポイントから一般市民に避難を呼びかけるためにマルーンを打ち上げる。


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価値ある投資

UKWMOの価値をお金に換算することは不可能である。しかし、完全に稼働するために維持する実際のコストは控えめに言っても年間460万ポンドかかっている。これは、システムを包括的で、単純かつ堅牢にして柔軟なものにするための費用である。

UKWMOの発展過程において、さらに、可能なかぎりフールプルーフを実現するように考慮がなされ、あらゆる事態に対処するために考慮がなされている。分析の最後で、たとえ組織が重大な被害を被ったとしても、警報を英国全土に発令するための十分な代替手段として存在し続けるようになっている。さらに、政府のほかの危機管理ネットワークの他部署は一般市民に核攻撃時になすべきことを助言する点について懸念を持っている。

UKWMOはもちろん、国家非常事態において行動するために政府によって計画あるいは設立された多くの機関のひとつである。そして、それら各機関は重要な貢献をする。本冊子に書かれたシステムに関して、専門家は、単に適時に一般市民に警報を発令することによって、600万〜1000万人の生命を救うことに寄与すると推定している。



14:20 25のグループ本部はシステムの中枢センターである。この時点で、放射性降下物の経路と強度はテレプリターネットワークを経由して、他のグループやセクターに送られる。放射性降下物の減衰率が対数グラフにプロットされる。グループ本部は、郵便局の機能にデータ処理センターの機能を、監視ポイントからの報告を評価するという任務に統合している。


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15:15 5つのせぃたー本部は統括と調整を実施している。彼らの任務は英国全土および国際レベルの広範な情報サービスである。


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付録


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警報コード
以下のタイプの警報が一般市民に対して発令される。

核攻撃警報 - 赤色
(音程の上昇と下降による)サイレンおよびBBCの放送によって伝達される。
核攻撃の危険が差し迫っていることを意味する。

放射性降下物警報 - 黒色
(3回の繰り返しの)マルーンやゴングやホイッスルで伝達される。
放射性降下物の危険が差し迫っていることを意味する。

警報解除 - 白色
(一定音の)サイレンで伝達される。
さらなる危険がないことを意味する。

放射性降下物警報は、BBC地方局が機能していれば、放送でも伝達される。

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06:00 人生は続く.... UKWMOが存在し、準備し、迅速に対応したことで、1000万の生命が救われた可能性がある。そして、新たな夜明けを迎えることができた。


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英国内務省のために中央情報局が作成1979年
英国印刷庁のためDaniel Greenaway & Sons Limited.が英国内で印刷
Dd 803 4436 Pro 13450 8/79
[Source: UKWMO on atomica]
posted by Kumicit at 2010年09月18日 22:16